■白馬岳(蓮華温泉登山口)
白馬岳は、現役時代に3回ほど計画したが、ことごとく中止に追い込まれた山であった。中止の原因は、天候であった。自分の最近の山行では撤退や中断が続いていた。これは、年齢相応に、気力、体力が失われてきた結果だろうと考えている。
今回は、登頂できたが、これは「やったぁ!」ということではない。個人の限界を越えた登山がどうなったかを記さなければならない。思い出すのは、トムラウシ山の遭難記録である。生存者の証言では、亡くなった方は発狂されるようである。これから、涙が出るのをこらえて、自分がどのように壊れて行ったかを思いださなければならない。
人間は、ポキっと倒れるのではない。ジワジワとあちこちと弱って来てから折れるのである。
まずは、データを記しておきたい。登りは、蓮華温泉登山口から白馬大池経由して登頂し、山小屋に泊まる。このコースタイムが、6時間30分である。これに対して自分のかかった時間が13時間である。下山は、同じコースであり、このコースタイムは、5時間20分である。これに対して、自分のかかった時間は11時間である。
少しでも登山経験のある方なら、この状態がどういうことかは、察しがつくと思われる。今回登頂できたのは、ひとえに同行者のくさのさんのおかげである。
【一日目】
白馬岳の登山口は主に3箇所ある。ガイドブックでは、雪渓を経由して登頂するルートが多く紹介されている。栂池公園からのルートも人気のようだ。今回、蓮華温泉登山口にしたのは、単に自宅から近かったからである。
前日車中泊しようと駐車場に向かったが満車であった。そこで、数百メートル前のいわゆる安全地帯に停めた。早朝、朝食にパンを2個食べ、明るくなってから出発する、朝焼けの山が印象的であった。このブログの写真の大半はくさのさんから提供された。
駐車禁止の看板の前に駐車している不届き者がいる。また、1kmも前の空き地に止めている方も数名いた。
駐車場の様子である。もうどこにも停めることは出来ない。
自分の調子は、少なくとも悪くはなかった。
帰りにここの温泉に入って帰りたいと話していた。
白馬大池が全工程の半分ほどなので、ここで大休憩を取る予定で出発する。逸る気持ちを抑えてゆっくり目に進む。
このルートは悪路で5kmもある。この丸太橋は、いろいろ紹介されている。
面白い樹木が見つかった。
まずは最初のポイントである。
天候は最高で、こんな日はもう二度と来ないのではないかと思いながら歩いていた。
追い抜かされることばかりで、追い抜くことはなかった。
やっと1kmである。
上を向くと、樹木の葉の間から青空が見える。
まったくいい天気である。
登山道の傾斜は緩いが、その分長い。岩だらけの道である。まあ、普通であろう。
見晴らしのいい場所ではゆっくりと休息も兼ねて撮影できる。
こういう雄大な景色は、こころを弾ませる。
ガイドブックでは少し歩くとカラマツ林があると、くさのさんが言う。この少しが2時間であった。
これが紅葉したらすごいだろうな。
ロープの張ってある場所に到着である。
天狗の庭である。コースタイムはここまで1時間であった。
足場の悪い道を進む。
だんだんとへばる。
岩場なので足が痛い。
これは板状節理なのか?登りにくかったね。
樹木の間から見える景色は素晴らしい。
ここらで、アミノバイタル接種である。今回は、ゼリー4個、アミノバイタル粉末の高濃度1箱、痙攣防止に芍薬甘草で臨んでいる。
いい景色である。
そろそろ開けて来た。
地元の里山ではこういう眺望は得られない。
白馬大池山荘に到着である。ここまではコースタイムの1.5倍である。
最初は、ここでテント泊の予定であった。しかし、テントも予約制で満員であった。
普通ならここで一山分登っている感じである。しかし、ここからが本番である。大丈夫かなと思ったが、宿泊場所が山頂なので行くしかない。
思ったより広かった。
こんな標高こんな湖があるのが不思議である。
山小屋の前である。
一応、集合写真を撮る。あらかじめ地図で調べたことは、ここまでの傾斜の方が急で、ここからは広い等高線であったので、ここから下山するつもりで登ればいいなどと考えていた。
自分は登り3時間が限度であると考えている。今回の無謀ともいえる登山のツケが後半やってくることになる。
この右側の山だろうと根拠のない憶測で進む。ところが、まったくお呼びではなかった。
休憩である。今回は長丁場になるので、適度に休憩を取る様にした。
ピークを目指して登るも、標識もないピークが多かった。
これは、縦走登山ではないか。
やっと名前のあるピークに到着する。
尾根道はこれからが本番のようだ。一瞬、気が遠くなる。
眺望は最高である。
あのピークかも知れないと登る。
ここは小蓮華山で新潟県の最高峰と皆が言っている。
ここで適度に休む。
雄大な景色を堪能する。
ついに最後のピークだと進む。
ここは三国境である。ここから白馬岳方面に向かう。
まだまだのようだ。
ここを登れば頂上に違いない。しかし、名前のないピークであった。
あれに違いない。と頑張ったら、その先10分ほどの距離に頂上が構えていた。
登頂である。
くさのさんが決まっている。
集合写真を撮ろうとカメラをタイマーにしたがうまくいかない。
今度もダメである。
一人づつにしようとしたが、やはり。
誰か撮ってくれる人はいないか。
今度も間に合わず。
その辺の人に頼んだ。
下に見えるのは白馬山荘である。自分たちは、そこを抜けて先の村営の宿泊所に予約してある。
もう日没である。
ずっとガレ場歩いているので、感覚がおかしい。15分の距離を30分かけて進む。
宿泊する山小屋に着いた時は、真っ暗であった。
素泊まりで予約してあるので、夕飯を自炊する予定であったが、自分はまったく食欲はなく、そのまま眠ることにした。朝5時半の菓子パン2個で昼食も夕食も摂らず、倒れこむように眠った。山小屋は感染対策でシーツがなく、自分で持ってきたのを被る。
いいこともあった。ウエアが濡れていないのである。サラサラで、着替えの必要がなかった。気温が低く風もあったので汗も直ぐに乾いたのか、あまりにも遅いので汗もでなかったかである。
【二日目】
朝は4時過ぎに起きる。腹が減って仕方がない。自分はアルファ米の五目御飯にする。味などは二の次で、兎に角カロリーを補給しなければシャリバテに繋がる。
くさのさんは、洗面所にいったきり、来ない。様子を見に行くと、米を研いでおられる。一合をご飯で飯盒炊飯をするという。熱源はアルコールである。
ムラシもキチント行う。
ご飯は綺麗に炊けている。
上で加熱しておいたレトルトカレーを掛ける。
少し足りないが、ここで出発である。
日の出の少し前か。
ガスが濃い。
帰りも頂上を経由しないと戻れないので昨日の道を歩く。
ブロッケン現象を捉えた。
もう一枚である。
逆光のなかもう一度集合写真を撮ってもらう。
この痩せ尾根は馬の背のようだ。
まずは、あのピークへ向かう。
昨日のダメージは残っており、私の下山の速度は時速1kmまで落ちた。一歩は靴半分である。
いくつものピークを登らなければならない。
予定を大はばに越えて大池に到着である。
30分ほど休んで、最後の下山である。このころは、意識が少し飛んでいたようだ。
なんで、半歩づつしか降りれないのか。情けなくて情けなくて、自分が嫌になっていた。
ついにダウンである。全身の筋肉痛、下痢、吐気、足裏の激痛ともうダメである。しかし、まだ4時間ほど歩かなければならない。幻覚も見えた。男女の登山者が座っているのが見えた。近づくと、丸太であった。大型車が車庫に入っている。やっと里まで降りたかと考えていたが、単に樹木であった。残り2kmの標識もあてにならず、ついに泣き言が口から出るようになった。こうなってはアウトである。進み具合は半歩ずつをキープしている。くさのさんから時速1kmを切ったといわれてもどうしようもない。
なんとか日暮れ前に登山口へ到着した。温泉に向かうも17時までということで別の温泉を探すことになった。
ここは温泉場なのでうまい具合に幟が見えたので入った。熱かった。最初に浸かった時は、寒気がして嘔吐しそうになったので一旦上がる。なんとか、首まで浸かったが、日焼け止めを塗り忘れており、ヒリヒリで我慢できない。しかし、熱いお湯はすっきりした。
体重計があったので計る。また4kg落ちている。8月頭から8kg減った計算になる。
夕飯は少し贅沢にトンカツにしたが、全部食べることは出来ず残した。
今回の登山で分かったことは、自分はコースタイムの2倍で計算すべきということである。当初の、白馬大池でテント泊後の登頂の場合、日暮れまで戻って来れなかった。
これからの登山はお金はかかるが、登り方を研究すべきであろう。今回の場合は、白馬大池で一泊し、頂上でも一泊するというふうな計画が必要なのかなあ。(まだ、登る気でいる?)