正しい路

■正しい路
◎赤々と炎のように燃えた路    禅智
 職場の前の道路にカエデの並木がある。今の時期真っ赤っかになっている。平野部でも紅葉が真っ盛りになった。もう少し経つと落ち葉になって枝だけに変身する。少しの間の見ごろだ。街路樹は、先端が細くなっているので、大きな松明の炎のようにも見える。
 今日、一人退職された。77歳で最年長である。自分も入社以来いろいろあった。個別に挨拶に来てくれたので、固い握手を交わした。50年間仕事に培われた手は大きく、しわが深かったが、暖かかった。顔はすがすがしく職人としても責務を全うした自負がうかがえる。まさに勇退であろう。彼にとってはこれが正しい路であったようだ。
 別れ際、私もすぐ跡を追いますと話した。
 これからもますます元気でいて欲しい人である。
 これを書いているときに、先ごろ同じ77歳で亡くなった赤瀬川原平さんを思い出していた。この方は、シャープペンシルとケシゴムで執筆されている光景が何年も前のテレビで紹介されていた。書籍は「老人力」をはじめ何冊か読んでいるはずである。
 手書きといえば、今年6月にISO管理責任者の役員が突然定年退職され、その仕事が自分に回っている。手書き文化が根強く残っており、当初は入院するくらい悩んだものだが、最近は手書きもいいものだと、赤瀬川さんのことを思いながら過ごしている。パソコン文化によって文字が書けない、分からない、誤字、当て字が大量に発生しているようだ。自分の登山記録などは酷いものだ。気が付いたところから直してはいるが、多すぎて対応できない。
 年々文化レベルが下がっているこのごろだ。パソコン・テレビで考えたり覚えたりする機能を奪い、車社会で運動する機能を奪う社会になった。そして長生きリスクと向かい合いながらベッドで過ごす。これを豊かな時代になったという人がいるようだが、どうも素直に賛同できないなあ。