カケス

■カケス
 昨日から妙な感覚があった。カケスが呼んでいるような予感がしたものだ。こんなことは、これまでに何度かあった。
 カケスは、因縁ではないが、ここ1年ほど追いかけている野鳥である。登山中でもカケスの声が近くで聞こえれば『カケス・タイム』と称してカケスを追いかけていた。この功があってからかどうか分からないが、声だけであったカケスも飛んでいるところを目撃できたり停まっているところを目撃できたりしていたが、撮影は叶わなかった。吉峰で何気なく撮った野鳥がカケスと分かったが森の中でシルエットのような写真にしかならなかった。こんな状態でも図鑑登録していた。
 家人を職場へ送って行って、立山山麓に向かう。しかし、カケスの声は聞こえなかった。やはり、予感は気のせいかと思い、トイレを済まし乗車する時点でカケスの声が聞こえる。それも合唱しているようなので、群れであることは分かる。
 私は、昼食も日課にしていた昼寝も取りやめでカケスを追いかけた。これが、寝食を忘れて没頭するということであろうか・・・・。
 しかし、相手も素早くカケスの群れは行ってしまった。そこでしつこく、マムシに注意しながら四阿で待つ。
 すると数羽が向こうから飛んでくるのが見えた。しかし、止まった場所が深い樹木の中である。構わずシャッターを切る。群れで来たんで一羽ぐらい撮らしてくれるだろうと興奮気味であった。


 やはりシルエットのような写真にしかならない。(図鑑登録ならず)まだ、しつこく待つ。
 まだまだ、不鮮明ながら今日のところはこれで良しとしよう。(図鑑登録)

■「入らずの森」(宇佐美まこと著、祥伝社、1999年)を読む。
 野鳥や植物の知識が豊富な方である。
「〜人は死んでも念は残る〜」
「失意と落胆、焦燥、そして絶望――」
「菌類の菌糸が、木の幹や大枝の中に入ってしまうとな、木質を分解していくんや。」
「野の教師」
「〜むっとする草いきれの中、濃(こま)やかな緑の中、清々(すがすが)しい風の中〜」
「粘菌ていうのはな、森の中の土や朽ちた木や落葉の中なんかで生活しとる原生生物なんや。これの面白いところはやな、摂食活動をしとる時は、変形体と呼ばれる網目状のアメーバみたいな形で、移動しながら細菌とか微生物を食べるんや。そんで、さあ繁殖するとなったら、突然キノコになって頭に胞子を作って飛ばすのや。つまり、最初は動物で、後で植物になるわけやな」
「この虫こぶはな、昔から人間のために役立ってきたんやぞ。〜虫こぶには植物体に含まれるタンニンがぎゅっと凝縮されとるんや」
「それが、いつの間にか生産性や効率だけを重視する数字至上主義の会社システムの中に組み入れられてしまった。」
「自分を高め、本質を見抜く力」
「死ぬっていうのは、大仕事なんだなあ」
「山の人らは病気になっても医者にかかったりはせんかった。」
「〜自分と自分の家族にしか興味がないという昨今急激に増えてきたタイプの男〜」
「〜サービス残業をさせられたりすることから解放されて、自分はここでこうしてのびのびと自然と共生してやってるんだって。これこそが人間らしい生き方なんだって。そう思い込みたかっただけ〜」
「人間だけが進化したと思っているのは、人間だけかもしれませんね」
「ものごとには、時機というもんがある」
「もう終わりだ――。全世界の人間が、俺を名指して笑うに違いない。何一つまともにやれない男。等級付けでは最下位の男。自分は逃げ回っているだけだった。」