考える

■考える
 雑誌の記事の引用である。
 「僕たちが子供の頃には、教科書に必ず載っていた名著だから一度読んだ方がいい」と知人から勧められた小林秀雄氏の著書『考えるヒント 』(文春文庫)にも、次のような一節がある。
 「考えるとは、合理的に考える事だ。どうしてそんな馬鹿気た事が言いたいかというと、現代の合理主義的風潮に乗じて、物を考える人々の考え方を観察していると、どうやら、能率的に考える事が、合理的に考える事だと思い違いしているように思われるからだ。当人は考えている積りだが、実は考える手間を省いている。そんな光景が到る処に見える。物を考えるとは、物を掴んだら離さぬという事だ。画家が、モデルを掴んだら得心の行くまで離さぬというのと同じ事だ。だから、考えれば考えるほどわからなくなるというのも、物を合理的に究めようとする人には、極めて正常な事である。だが、これは、能率的に考えている人には異常な事だろう」
 なかなか示唆に富んだ指摘であると思う。