50代以上に未来はない

■「老いかたレッスン」(渡辺淳一著、新潮社、2012年)を読む。
  この作家は「孤舟」以来である。含蓄のある内容が多かった。自分の年齢で読むのが一番ぴったしだと思った。行き成り、高齢者の定義から始まる。「国では65歳以上を高齢者と決めてるようだが、はっきりいって、公的には60歳以上とするべきではないか」と論破している。衝撃だったのは、「夫の捨て時」という記事が女性週刊誌などで平気に出ているということ。「定年後5年以内にかなりの人が何らかの病気をしている。」「忙しく働いていた人ほど、癌などにかかっても再発の率が低い。」定年後に最も必要な言葉が「ありがとう」である。

■50代以上に未来はない
 日経ビジネスからの抜粋である。
 35歳の時に海外転勤を命じられて家族とともに赴任。一昨年、帰国した後に妻が病気を発症した。日常生活では介護が必要な状態となり、治療のために定期的に入院している時以外は、この男性と高校生のお嬢さんがサポートし合って、二人三脚で何とか乗り切ってきたという。
「イヤな話ではありますけど、会社はどちらかといえば、50歳以上には早期に退職してほしいと考えている。50歳になると、自動的に早期退職の希望の有無を上司が聞くことになっていますし、やはり若い世代を育てていかないことには会社はもたない。そんな内情が分かっているだけに、自分の状況を言い出せないでいるんです」
 「あっ、でもこれは僕が個人的に感じていることで、何も明文化されたものがあるわけではない。女性も若者も未来があるけど、50代以上の社員の大半には未来はない。そう思うと、絶対に言えないですよね。言った途端、自分も『消えるリスト』に入るわけですから」
労働政策研究所(現在は労働政策研究・研修機構)が2006年に行った調査では、介護問題の実態を把握するとともに、介護に携わる人たちのストレスについても分析を行っている。その中で、社内の介護支援制度を実際に利用している人や、同僚、上司、専門部署に介護について相談している人たちのストレスが極めて高いと認められているのだ。
 本当は周囲や会社に知られずに自分の力で何とかしたかったが、介護に費やす費用や時間の問題から、どうしても周囲に相談したり、会社の制度を利用したりしなくてはならない状況に追い込まれた。しかし、そのことによって、自分の正社員としての立場が危うくなる。そうしたジレンマにストレスを感じているのだろう。