中高年の現状

■「うつぶし」(隼見果奈著、筑摩書房、2012年)を読む。
 30歳ほど若い女性作家の作品で文学賞を受賞した作品である。最初は女性のえげつない記述から始まり、失敗かと思っていたら、引き込まれるように読み進んでしまった。上手な文体である。文学作品という印象を持った。タイトルの『うつぶし』は何の意味かと思ったら途中で出て来た。樹木に虫がいるコブを「ふし」といい、虫がいなくなったコブを「うつぶし」ということであった。

■中高年の現状
あるブログからの引用である。
 先日、知り合いの印刷会社の経営者から、こんな相談を受けた。
「いやぁ、参ったよ。まさか今頃になってこんなことになろうとは・・・あのA君がねぇ・・・」
経営者から詳しく話を聞くと、昨年春、業績の悪化もあり、事実上の退職勧奨の末に会社を辞めてもらった社員がいた。それがAさん(48歳男性)だった。
「退職勧奨とはいえ、再就職支援会社の紹介もしたし、退職も会社都合扱いにして、失業手当が早くもらえるように手配もした。こっちとしてはやれることはやってあげたつもりなのだけど・・・」
その後、90日間の失業手当をもらい、細々と生計を立てていたAさん。
失業手当が切れて、そろそろ再就職のための活動を始め、履歴書を書き始めたまでは良かった。
しかし、40代後半で印刷の経験と知識しかなく、その印刷業界は斜陽産業と来ている。
他の印刷会社では求人すらなく、それ以外の業種の求人への応募もしたが、それから3か月で30件の応募は、応募先から何の連絡がないのが8件。残り22件はすぐに履歴書が返送されてきた。
「どうも自分は甘く考えていたようだ。やはり世の中は厳しくなっている」
Aさんはそう自分に言い聞かせて、その後3か月で180通もの履歴書を送ったが、求人企業からの返事はお祈りメールか、履歴書の返送でしかなかった。
「どうも、その後の再就職活動がうまくいかなかったらしい。それで年末には精神的にも追い詰められ、地域の団体に駆け込んだということらしいんだ」
その団体でAさんは、自分の窮状とともに、こんなことを漏らしていたという。
「まじめに生きてきたというのに・・・自分は失業し、こんな苦しい生活をしなければならないのか・・・。なんで・・・自分がこんな目に遭わなければならないのか。そうだ!会社だ。会社が俺をクビにしたのがそもそもの原因なんだ。ある会社に復讐をしてやりたい。俺がこれだけ苦しんでいるというのに、あの経営者はのうのうと暮らしてやがる。絶対に仕返しをしてやる」