ブラック企業

■「ブラック企業」(今野晴喜著、文藝春秋、2013年)を読む。
 よく書いてくれたと思う。私の記憶は30年前まで遡る。新しく分かったこともあった。
「印象的であったのは、多くの違法行為が存在し、凄惨なハラスメントの横行といった状況にもかかわらず、相談者はみな『自分が悪い』と口々に訴えてきた」
「『自分が悪い』と思う状況を作り出すことが、ブラック企業労務管理の特徴」
「常日頃社員が恐怖によって支配され」
「新人研修は従業員の『奴隷化』の最も重要な手法のひとつ」
「ミーティングルームで、幾度も幾度もコンプレックスのえぐり出しと自省を重ね、徹底的に自己否定することを強いられる。」
「大勢の同僚の前でなぶり者にすることで羞恥心を煽るのである」
「スウェットでの出勤や坊主頭を強要」
「常に大量に採用しておいて、『使える者』だけ残して、あとは大量解雇したい」
「いくら好景気になろうが、〜変わることがない」
「過労に自らを駆り立てられる人間しか〜必要とされない」
ブラック企業の指標〜①選別(大量募集と退職強要)、②使い捨て(大量募集と消尽)、③無秩序(動機が無い)」
「ひどくなると、『民事的殺人』と呼びうる状況にまで至る。」
ブラック企業が『選別』と『使い捨て』によって生じる損害の費用を、社会に外部化するシステムを、『戦略的』に整備していることが問題である」
スキルアップの転職であれば何の問題もない。問題は、違法行為に耐えかねた、不毛な離職なのである。」
「日本の若者がうつ病になろうが、高齢化が進展して日本の市場が縮小しようが問題ではない。」
「国滅びてブラック企業あり」
ブラック企業は将来設計がたたない賃金で、私生活が崩壊するような長時間労働で、なおかつ若者を『使い捨て』るからである」
「『代わりがいる』ことが、ブラック企業の成立にとって必須の条件である」
「学生に勘違いしてもらっては困る。お前たちが企業を選ぶのではない」
「マニュアル労働〜業務の単純化によって、代えが利くからこそ、膨大なノルマを課し、耐えられなければ実際に入れ替えることができるわけだ」
「この老舗大企業では、内定者を切るのではなく、入社させ、自分の企業の社員にしてから、じっくりと『指揮命令権』を行使して退職へと追い込んだ」
「政府や学者の基本的な思考枠組は、『若者の意識の変化』で雇用問題を捉えると言う傾向にある。」
「これ以上『耐える精神』を学ばせても、日本の生産性や社会の発展には絶対につながらない。」
「エリートのための『自由な働き方』を称揚するよりも、普通の人が生きていけるモデルを作らなければならない。」