リバース

■リバース

◎雨雲にポッカリ空いた青い空  禅智  
 よくあるのは、雲の形が何々に似ているなどという遊びである。今日の朝の空は一面厚い雨雲に覆われていた。ところが、雲と雲との境界が少し離れた場所からは真っ青な青空がちょこんと顔を出している。その形がインベーダーのようなモノもあり、大きな口のように見えるのもあり、反対もまた楽しいと思いながらの通勤であった。
 東の空は稜線が見えていないので山は嵐であろう。太陽のある位置からは縦に光の筋が神々しく降りていた。
 帰宅時は、宗教法人の前を通る。道路の向こうで中年のご婦人が何か喋っている。自分の他には誰もいない。まもなく、すれ違うが、その時に、『ごめんなさん、お寺の方だと思いました』
 そうか、自分は僧のように見えているのかと、まんざらでもない。

■「そのように見えた」(いしいしんじ著、イースト・プレス、2014年)を読む。
 新しい試みなのだろうか、水彩画のような絵が壁紙のようになってその上に文字があった。少し読みにくいという印象をもった。
 作家のかたである。「書き終え症候群」というのが面白い。しかし、ここまで集中できるからプロの作家なのだろう。集中した後に、毛躓いたり、ポカをやったりすることは、自分も経験があり自戒しなければと思った。