良い本に巡り会えた

「六十一歳の大学生、父 野口冨士男の遺した一万枚の日記に挑む」(平井かずみ著、文藝春秋、2008年)を読む。
 長いタイトルである。著者は61歳で慶応大学に入学し、現在(この本が出されたころは)大学院で研究している。この年代の大学入学は、今では珍しくなくなっているが、この本のすごいところは、作家であった父親が書きためていた日記を論文を中断して整理したところである。その数、一万枚である。
 日記の内容は、戦前、戦中、戦後の作家の厳しい生活が如実に語られ、息子の
著者の思い出も織り交ぜてあり、精読に近い読み方をした。売れない時代は、売れるものは何でも売り、生活のためには書かなければならない。30枚書いて気に入らないと前に進めない、一枚も書けない日が続く、下書きと読み返しでの修正と清書など細かく書いてある。
 自分はこの作家を知らないが、川端康成三島由紀夫などと親交があった。
 いろいろな賞を取り、原稿の注文が入ると健康を犠牲にして書かなければ
ならない。苦しみと書いてあった。一見、気楽、定年がないと考えがちである
が仕事となると皆同じであろう。
 

 計画していた山行きが雨で中止になった。4名で中山登山をすることにして
いた。まあ、この時期は仕方がなかろう。紅葉で晴れで休日という日は何回あろうか。山行きの準備はできているが、用無しになった。暇である。
 雨でも登るという元気はなく、本でも読もうか。しかし、これは体に悪い。
 明日は、傘をさしてその辺をぶらつくより他はないであろうか。