本当の豊かさ

■本当の豊かさ(筧 次郎)

 今この人の本を読んでいる。かなりのボリュームである。まだ数日かかるだろう。自分のあやうやな考えをビシッ!とまとめてくれているような内容である。実をいうと、感動しているのである。
 どんな人かをもう少し知りたくて、検索したら講演記録がアップされていたので部分抜粋したい。

(以下、抜粋)

 実は工業製品というのはですね、なくても何の不自由もないってことが、20年やってきてわかりました。これは本当に極端な言い方だけど、私は、物、品物、物質、物っていうのは、人間が健康に生きるために必要なのであって、それ以外は要らない。むしろないほうがいい、というふうにだんだん思うようになった。健康に生きるためだとね、例えば、ストーブとかクーラーとか、ない方が健康ですよ。
 実はガンジーさんも健康になるためには百姓でなくちゃいかんと言っています。私も実はそう思う。つまり、百姓の暮らしというのは自然のリズムにあった暮らしだから。
 ストレスというのは競争社会、競争に打ち勝たないと生きていけないという現代社会のしくみがストレスの大元にあると思っています。競争は人間社会に必然的だという人がいるけれども、「工業社会だけではない、ずっと大昔から競争というものがあって、競争が人間を進歩させてきた」という言い方をする人がいますね。私はそれはNOだと思います。競争は人間社会に必然的なんじゃなくて、工業社会に必然的な価値だと思っています。
 ガンジーにとって自治というのは収奪されることがない、奪われることがない、支配されることがないけど、反対に収奪することもない、奪うこともない、支配することもない。自分の肉体労働で自立的に生きること、それがガンジーにとっての自治なんです。
 豊かさ=消費財が多い。ものが満ちあふれている、そういう価値観を見直してほしい。そういう価値観を見直すことが大切だということをお話ししたい。工業社会というものは、欲望を次々に開拓して満たすことを目標にしてきました。それが社会の進歩のようにいわれてきたわけですけど、私はそれは決して進歩じゃない、むしろものに振り回されて心が貧しがっている、そういう社会だったんじゃないかなというふうに思うのです。
 欲望というのは、楽をしたいという欲望でも、追求していくとエスカレートしてきりがない。満たされるとそのときは嬉しいんだけど、次のときから当たり前で、なんの喜びも失っちゃう。それをよく考えていただきたいなと思う。だから、もっと別のところに幸せを求めないと、多分この社会がいつまで進歩しても、いつまでも満たされないという異常な社会になっていくというふうに思います。