プロ考

■「大江戸しあわせ指南」(石川英輔著、小学館、2012年)を読む。
 最近の論調は、昭和30年代のような生活をすれば、この世知辛い世の中を渡っていけると論じている。自分の6〜7年前の考えがそうであったことを思い出している。生活するには必要が少ない、自家用車、携帯電話、生命保険を放棄し、固定電話をIPフォンに変え、新聞、雑誌はやめ、本は図書館一本にした。だからと言って、みじめでも、苦しくも何ともないのである。むしろ、健康と建設的な考えを手に入れ、活き活きと暮らしていける。昭和30年代の夢と希望に満ちていたようにである。まだ、カロリーの摂取過多と運動不足を解消するという課題は残っている。
 もう一歩進んで、江戸の暮らしを研究するともっと考えが広がると思い読んだ。流石に火打石や行燈や水車では違和感はあるが考え方は学べたと思う。テレビでは、ポリエステルの古着を回収し、原子レベルにまで分解し再生するという会社や、シートベルトや廃材を利用して独創的な商品を製造販売している会社を取り上げている。いつの世にも時代の先端をリードしている人達は活き活きとしている。
 足るを知る、身の丈に生きるのお手本である。

■プロ考
今まで忘れかけていたことを思い起こさせてくれました。 
 日経ビジネスからの抜粋である。
「私、ちょっと中国語を話せたんで、前の会社が中国に進出するってなった時に、現地に赴任することになりましてね。英語を話せる中国人はあまりいませんでしたから、多少下手くそでも私のように中国語を話せると重宝されたんです」
中国人は日本人よりガッツがあるっていうか、何というか。1つ教えるでしょ? そうすると食らいついてくる。とにかく覚えるのが速いし、一生懸命やる。
そんな中国人ですから、日本語が上達するのも速くて。気がつくと私の中国語よりも上手に日本語を話す中国人が山ほど出てきた。生産管理も自分たちでできるようになった、日本語も話せて本社とも話ができる。となれば、私はお払い箱ですわ。
席はあるけど仕事はない。会社が2年間は私を受け入れる契約をしてくれていたんですけど、完全なフリーライダーです。とにかくヒマで。ヒマって結構しんどいんですよね。窓際に追いやられている自分も情けないし、居場所のないことにストレスも感じていました。
グローバル化は、一部の人と企業にしか利益をもたらさない。グローバル化が進めば、中流層の仕事は低コストで雇えるアジアなどの外国人に奪われる。グローバリゼーションの名の下に始まった、労働のダンピング劇。求め続けられる人だけが生き残り、そうでない人は淘汰される。強い者が残り、弱い者が食い尽くされる。
 これがグローバル化の実態なのだ。
 「1万時間の法則(10000-hour rule)」――。
 米誌「ザ・ニューヨーカー」のスタッフライターであるマルコム・グラッドウェル氏が著書『天才! 成功する人々の法則』(講談社、原題は“Outliers”)の中で、「Ten Thousand hours is the magic numbers of greatness.」と記したことがきっかけで広まった成功の法則である。
 グラッドウェル氏は、世の中で「天才」と呼ばれた偉人たちを調べ上げ、彼らが生まれながらの天才ではなく、「1万時間ものトレーニングを積み重ね、天才と呼ばれる能力を開花させた」と説いた。
 意志力(Grit)――。実に前向きで力強い言葉。気骨、不屈の精神、と訳されることもある。
つまり、仕事で「プロになる」ためには、物理的な時間以上に必要なものがあると思うのだ。最近では滅多に評価されることのない、経験、という変数だ。