新しいリストラ手法

■「ニートの歩き方」(pha(ファ)著、技術評論社、2012年)を読む。
 ニートの方が書かれた本である。元来自分の読みたいジャンルではないが、偏るのもどうかと思い手に取った。何か所か、有名な話というのが出てくるが、自分は一つも知らない内容ばかりである。
 冒頭に出てくる「メキシコ人の漁師」の話というのがある。
 MBAを取得している旅行者と漁師との会話である。旅行者は漁師に毎日何をしているかと問うが、漁師はその日食べる分だけの魚を採り、後は昼寝したり友人と語り合ったり、家族との時間を過ごす、と答える。旅行者は、それは間違いだといい、もっと長時間働き大きな漁船を買い会社を興し金持ちになるべきだと進言する。漁師はその後はどうなるかと旅行者に聞く。旅行者は、そうすれば昼は昼寝をしたり友人と語り合ったり、家族との時間を過ごせると答える、という話である。この話は面白かった。
 また、故、中島らもの話として「『教養』とは学歴のことではなく、『一人で時間を潰せる技術』のことである。」紹介している。
 さらに、「働かざる者食うべからず」という言葉は、働かずに労働者を搾取しているブルジョアに対して発せられた言葉であると教えてくれた。
 働き蟻の話も面白かった。本当に働くのは全体の2割で残り8割はさぼっているのである。そこで、働く蟻のみにしたらどうなるか、そうするとその中でも働くのは2割だけで残りはさぼるのである。さぼった蟻だけにするとどうなるか、その中で2割は働くようになるのである。
 まだ33歳ということである。最後に「いい人生だった」と過去形で結んでいることに衝撃を覚えた。筋金入りのニートである。こっちの方面は、もっと学ぶべきことが多いような感じをを持った。

■新しいリストラ手法
 日経ビジネスからの抜粋である。
 「PIP(Performance Improvement Plan、業務改善計画)と呼ばれる手法だ。このやり方では、不法行為になる危険性の高い退職勧奨を当初は使わない。まず配置転換と業務命令を組み合わせて、達成不可能な業務改善計画を与え、社員が辞めざるを得ない環境を作るのが特徴だ。多くの人は退職勧奨される前に、心が折れて自ら辞めてしまう。なおも耐えた人は、与えた課題が未達成であることを理由に退職勧奨されるか、解雇される。
 多くの場合、PIPはまず、本人が未経験または得意でない職場に異動させるところから始まる。そこから先のパターンはいくつかある。一つは、過大なノルマ与えるパターンだ。多くの場合、目標はクリアできず評価は下がり、減給及び降格につながっていく。
 PIPは退職勧奨ではないし、形式的には業務命令としてプログラムを課すだけだ。会社からすれば人事考課の一環であり、拒絶すれば業務命令違反になり、場合によっては懲戒処分を受けかねない。
 人事部の中に「キャリアデザイン部」なる部署を新設し、そこに管理職を100人くらい押し込んだ。業務命令は「就職先を探してください」の一点。就職先が見つからないと、面談の度、評価が下がり年収が大幅に引き下げられる。S、A、B、C、D、Eと6段階から構成され、面談の度に50万円ずつ年収が下がっていく。逆に、就職先を見つければ、評価は最高評価のSになり、晴れて会社を辞めていく。漫画のような話だが、現実だ。
 かつてリストラにもルールがあり、企業もやるからには相当の覚悟を持って取り組んだ。今はやりたい放題なのが現状だ。」