富士山の入山料

■「航空機産業のすべて」(中村洋明著、日本経済新聞出版社、2012年)を読む。
 休日は勉強の日に当てている。今週は仕事に関係する専門書である。なかなか分かりやすい本である。企業名も実名で書かれてある。どうも航空機だけで売上向上は難しいようである。むしろ、この技術を民生品に当てはめて技術力アップする方がいいということは理解できた。新素材のCFRPや特殊工程でのことにも触れている。もう周知であるが、PRIのNadcapは必須と記述してあった。良かったのは最後のコラムBで航空機業界に参入する心構えなどが詳しく書いてある。自動車の部品点数が3万点に比べ航空機は300万点である。本文中にも英語力のハードルがあり、留学などさせて準備する必要性を説いていた。
 最近、国産技術の3割以上が導入されているB787のトラブルが日々報道され現在運行を停止している。新しいものにはメリットもあるがデメリットもあるということをしっかり認識する必要があると感じた。この本は、関係者必読であろう。

■富士山の入山料
 週間ダイヤモンドからの引用である。
富士山の入山料の徴収を検討する、というのである。
 話そのものは十年ほど前から出ていたとのことだ。いったんは県の外部有識者らが時期尚早との見解を示し、計画は立ち消えとなっていたが、富士山が世界文化遺産登録の推薦を受けたことから本格的な検討に入ることになった。
川勝平太静岡県知事によると、富士山の環境保全が目的らしい。世界文化遺産に登録されれば……、ほぼ間違いなく登録はされるだろうとの予測が大半だが、そうなればこれまでよりはるかに多くの登山者が富士山を訪れるだろうことも必至。入山料を課して、登山者数を規制するのが狙いだ。もちろん、環境保全の財源を確保する意味もここには含まれる。
世界自然遺産に登録されている白神山地を紹介する青森県のホームページに、ちょっと粋な末文を見つけた。
白神山地は天然の博物館です。尊い遺産が伝えられたことに感謝し、一人ひとりがルールを守り、ブナ天然林の美しさを残すため、ベストを尽くしましょう』
 役所の文書ではあるが、私はこういう伝え方が好きだ。ちなみに、白神山地では入山料なんてものは徴収していない。
富士は日本一の山であり、日本人の誇りでもある。静岡県側から見ようと、山梨県側から見ようと、どちらも劣らず美しい。あんなに美しい富士の麓で軍事演習を行なうのは軍人の無粋とあきらめる他はないが、静岡県知事の発言もまた、私には興醒め以外の何ものでもなかった。山登りを有料にしようなどとは。