就活威嚇社会

■「俺たちのコンビニ」(峰月 皓著、メディアワークス文庫、2011年)を読む。
 コンビニを舞台にした店長と高校生アルバイトの交流が描かれている。ほろりとなる場面もあり、今忘れ去られていることだなあと想いながら読み進んだ。ハッピーエンドで良かった。

■就活威嚇社会
日経ビジネスからの抜粋である。
“就活威嚇”時代。就活の結果で、その後の人生のすべてが決まると思い込む大学生たちが大量に発生している異常な社会が、今、ここにある。
今は、内定が、「その人間の存在価値」を測るモノサシのごとく扱われている。
 誰もが知っている会社の正社員の内定は、その後何十年も続く人生のすべてをバラ色に輝かせる「金貨」で、それを手に入れないことには未来がないように思われている。
 だから、学生たちは一斉にその金貨を求め、就活に命を懸け、必死に走る。
 正社員の身分を得た若者が、その金貨を失いたくないがために、過酷な労働に耐え、体を壊し、心もボロボロになり、死、という悲しい選択をしてしまうことだってある。
誰もが知っている会社に内定をもらえた人=価値ある人―─。
 そんな訳の分からないモノサシに、社会全体が振り回されている。
一体なぜ、社会(オトナたち)は、いつまでたっても、「いい大学に入ればいい就職先に進めて、いい人生を送れる」といった幻影を追い求めているのか?
効率のいい勉強法を習得した人の偏差値が高くなり、社会から「勝ち組」と評価される。
来春卒業を予定している学生の就活シーズンまっさかりの大型連休中、「無職説明会〜大切なことは全て無職時代が教えてくれた」なるものが開催された。
 このセミナーを報じた日経新聞には、出演者の1人で現在、25歳の男子大学生の興味深い経験談が載っていた。
 この男性は中学卒業後に6年間の引きこもり生活を過ごし、大検を経て進学。「世界一即戦力な男」というコピーで自分をPRするホームページを立ち上げ、企業から見事内定を勝ち取ったそうだ。
「50年後に勝っているのは自分」と会場を沸かせたとも書かれている。
たまたま会社とマッチングしなかった。ただ、それだけのこと。こんな言い方をすると勘違いされてしまうかもしれないけど、たった「それだけ」のことでしかない。
 たったそれだけのことで、就職が理由で命を絶つ学生たちがいる。
 「15〜34歳の若い世代で死因の第1位が自殺となっているのは先進7カ国では日本のみ」という事実は、もっともっと取り上げられるべき話題だし、もっともっとこの問題に深刻に向き合う必要があるように思う。