介護で失職

■「金属が語る日本史」(斎藤 努著、吉川弘文館、2012年)を読む。
 仕事に関係することもあり手に採った。
「五円玉は黄銅(銅―亜鉛)、10円玉は青銅(銅―すずー亜鉛)、50円玉・100円玉は白銅(銅―ニッケル)、500円玉はニッケル黄銅(銅―亜鉛―ニッケル)」

■介護で失職
日経ビジネスからの抜粋である。
 「昨年、会社を辞めたんです。仕事との両立が難しい状況になりましてね。そのまま会社にいても、フリーライダーになるだけでしたし。でも、最後に親孝行できてよかった。母親とあんなに長い時間を過ごしたのは、子供の時以来。でも、かつての母とは全く違う、年老いた母。妙な気分でしたよ。いつの間にこんなに年を取ってしまったのかと。100点には程遠かったと思いますけど、自分なりにできることを精一杯やったつもりです。父親を早く亡くして、親孝行らしきことは一つもできていなかったので、こういう時間をくれた母に感謝しています」
特に彼が仕事をあきらめることで得た、親と向き合う時間。それについて「大切な時間を持つことができて満足している」と語ったのは、とても重かった。
つくづく人間って勝手だなぁ、などと思うわけで。で、またこういう話を聞くと「会える時間を大切にしなきゃ」と反省するのだが、それでも再び、日常に忙殺される。自分にとってかけがいのない、大切な存在である両親のことを忘れてしまう自分がいる。
年齢からすると、介護問題に直面するのは必然的に中高年が多くなる。一方で、その年齢になってからの離職は、かなり厳しい。何と言っても介護には費用がかかる。介護への不安と自分の将来への不安が重なり、精神的にも金銭的にも追い詰められる。
 危機を挑戦であると捉えるポジティブな感情が、危機をうまく回避するための絶大なる力を引き出すトリガーとなる。それ以上に、たとえ思い通りにならなくとも、「それはそれ」として受け入れることができ、納得できる心の強さが持てるのである。
肉体的にも、精神的にも、金銭的にも厳しい介護。介護ストレスが“刃”となって介護を受ける人に向けられ、「介護疲れの果てに……」などという悲しい事件を避けるためにも、自分自身でも備えておく。雨を止めることはできないけれど、濡れないように傘を差すことはできる。傘はたくさん準備しておいた方がいい。介護問題ほど、個々人で降り方の違うものはないのだから。