追い出し部屋報道

■「山あり愛あり」(佐川光春著、双葉社、2013年)を読む。
 主人公が同年代で抱えている問題も似ており吸い込まれるように読み進んだ。登山はなぜか常念岳がやたらに出てくる。銀行員の話であるが、愛嬌も感じさせられる。最後は涙ぐんでしまった。傑作本であろう。
「山に向かって姿勢を正す」(新田次郎
「厚手の靴下を何足もはきつぶした」
「いい仕事をするためには贅沢が必要です」
「優れたものは瞬時にして、われわれを別世界に連れて行ってくれる」
「山は麓から一歩一歩自分の足で登るもので、バスやケーブルカーを使ってレジャー気分で山頂をめざすなどは論外だ。」

■追い出し部屋報道
ある記事からの抜粋である。
「8回も圧迫面談されつつも耐え抜いている不屈の従業員だ。
読者の中には「こんなやつがいるから会社が傾くのだ」と思った人もいるかもしれないが、筆者はむしろ、彼こそが終身雇用制度の生み出した最強のソルジャーだと考えている。
というのも、突き詰めるなら「転職など考えずに一途に組織のため働くこと」が終身雇用のミッションであり、それを忠実にこなしてきて、今もなおそうしようとし続けているのだから。まさに「一所懸命」である。
贅沢言わなきゃ転職先はいくらでもあるだろうとか、人格否定までされて残る意味があるのかとか、外野の突っ込みは彼の耳には届かない。彼の眼中には、ただ、今の職場があるだけだ。
個人の生涯を一企業に面倒見させるシステムの敗北はもはや明らかであり、であれば末端兵士に玉砕を迫るのではなく、別の選択肢を与えられるような議論を進めることこそ、本来の革新派の役割だと思う。」