雨上がりの朝

■創作

◎雨上がり弱い邪念を吹き流す   禅智

 昨日は強風であった。傘も差せず徒歩で帰宅する。風が強すぎたのかあまり濡れていない。
 打って変わって、今朝はすがすがしい。雨雲は東の空に行ってしまい、西の空は明るい。
今日は暑くなりそうな気配だ。
 雨上がりの朝というのは、この時期はいい。もう少し気温が上がると蒸し暑さが目立つ。
路面に出来た水溜まりを見ると世の中の汚らしい物事を流してくれているようだ。それと同時に自分の中に芽生えている弱い邪念も、そよ風といっしょに吹き流して欲しい。

■「途方もなく霧は流れる」(唯川 恵著、新潮社、2012年)を読む。
 最近読んだ中で最高であった。作者はほぼ同い年で内容もこの年代にマッチしている。山のことがところどころに出てきて夢中で読んだ。最後は、涙腺も緩んでいい。
「会社に君の仕事はないと思ってくれ」
「俺たちはいったい何だったのだろう。〜会社に何を捧げ、何を奪われたのだろう。いいや、自分も同罪だ。俺もまた会社を食い物にしてきた。いい気になって甘い汁を吸い続けていた。」
「ニュースはインターネットがあれば十分だし、さしあたって気になる情報は天気予報ぐらいのものである。」
「食うだけで精いっぱいの今、食えるのならなんでもやる、食うために働く、それが仕事というものではないか。」
「母と娘には、母と息子とはまた違う関係性がある」
「親が子にできるのは〜自由にさせてあげること〜それなのかもしれない。」
「死ぬ前に自分ができることは何なのか。〜自分には思い残したことがある。償わなければならないことがある。」
「定年が近づくにつれ、男はこうして少しずつ角を落してゆくのかもしれない。」
「ある日突然、妻が小説家になる。」
「それなりの企業に籍を置いたことのある男は、肩書を捨てるのがどれほど難しいか、ということだ。人生の中のいちばん輝かしい時期にしがみつこうとする。」
「何もしないっていうのは、人間を無気力にするばかりだと思います。」
「じゃ、登山はどうですか?」
「新しい仕事に就いてから、不眠に悩まされていたらしい。慣れない仕事と人間関係で相当疲れていたようだ。」
「人間が山を新興の対象にする思いが素直に理解できるようになる。何があろうと山はそこにある。その約束を決して違えない。」
「毎日ひとつづつ、出来ないことを増やしていった。」
「生きるって何なんだ、死ぬって何なんだ。」