秋ひえ

■秋ひえ
◎瞼閉じ胸を押すのは嶺の風  禅智
 朝、すがすがしい風が体を包む。少し寒いが我慢できないほどではない。ふと、以前もどこかで経験したような風であると思った。じっと眼を閉じて、胸を押す風に体を預けてちょうどいいバランスのところでたたずむ。
 この風は、山小屋を出発するときの風に似ている。どこの山だかはっきりしないが、瞼の裏には、嶺から吹いてくる風を描いている。もう、山へは登れなくなった。
 しかし、これは病を克服すれば可能である。病を克服する前に解決しなければならないしがらみがあり、安静には程遠い。(ああ、ウイ!)
 稲の穂がだいぶ色づいて来ている。米になっているようだ。実るほど、頭を垂れる稲穂かな、という誰が作ったか忘れたが妙に覚えている句がある。
 最初は、人間謙虚にならなくてはいけない、知識のある人ほど、頭を下げて腰が低いものだということかと考えていたが、今は違う。
 黙ってうなだれている囚人のように思えてくる。一生懸命に努力しても、年齢があがり、無理が効かなくなって貢献度が下がれば首を切られるごとく、刈り取られるのだの例えのように感じる。
 朝食に果物が出る。なんと3種類である。マッカ、梨、ももである。これをこの順番で食べないと味気なくなる。感動したのは桃である。丸ごと皿に乗っていたが、感動はこれではない。ガブリつくと、果肉に切れ目が入れてあり、食べやすい。この心遣いに感動した。

■「花と昆虫、不思議なだましあい発見記」(田中 肇著、講談社、2001年)を読む。
「花の形には意味がある」
「花が雄から雌に変わるので、同じ花の花粉を受けることはない。」
フクジュソウの花も光沢があり、中央がくぼんだ凹面鏡になっている。〜光を集めて昆虫を温めている〜雄しべも温めて生理反応を高め〜」