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■白い杖
白い杖を付いた若い人が、同伴者に手を引かれて自分の席の隣に腰掛けられた。
自分も早晩似たような境遇になるのではと、重ねてしまう。
杖の主は、見かけは健常者と変わらない。そのうち、杖を折り畳んでカバンに仕舞しまった。まるで、登山のストックのようであった。
恐らく自分なんか想像も出来ない苦労をされて来たのだろうと心が痛む。
しかし、その反面、目だけが見えないほど悪いことは、自分のように身体の器官の大半が、ガタガタに悪いことに比べてどうなんだろうと、考えてしまう。
少し極端ではあるが、全身病気に侵されていることは、■■■■を受けたに近い。
このことを、死と向き合うとか、死と闘うなどと美辞麗句で表わすことなど出来ない。これは、体験したことのない人なら書ける言葉であろう。
しかし、不思議なことでは、あるが自分はそんなに暗い気持ちではない。
人間、死ぬことが怖いという中に、どういった病で死ぬかが分からないからといったこともあると考える。
自分の場合は、高い確率で分かる。
このことが、毎日をゆったり暮らせている理由ではないだろうか。
■「君が残した贈りもの」(藤本ひとみ著、講談社、2023年)を読む。(その2)
「どうしようもなくダメな人間というのは、時々いる。~今の事しか考えず常に楽な方向に流れ、自分の利害にはこだわるが他人の気持ちには無頓着、目標のために頑張ったり我慢したりする事ができず、結果としていつまでも進歩しない。」
「不測の事態でもなければ、メールの返信は二十四時間以内というのが不文律だが~」
「~いい人って早く死ぬものなんだよね。」
「一生懸命にやってる。でも、できないんだ。」
「靴には、かなりの雑菌が付いている。」
「どれほどの努力を重ね、どれほどのものをあきらめ、どれほどの思いを抱えて終焉に向かって歩き続けていったのか。」
「協力とは、労力を提供するか、金を出すか、どちらかの事だ。」
「偉大な証明を成し遂げて歴史に名を遺す数学者たちも、例外なく孤独な生涯を送っている。」
「~歳を重ねていけば、人間は誰も様々な関係を失っていくだろう。」
「男には、風が吹く時がある。」
「人間は死んでも、様々な形で生きている者に働きかけ、共に生きていくんだろうな」
「命の長さは、誰にとっても不可知だった。」