バースデー

■バースデー

 朝から調子が悪い。軽い目眩がする。そういえば、最近終日泥のように眠る日がなかった。リタイヤ後は、どうやって休息時間を確保するかが一番重要である。そこで、今日をその日に当てようと考えていた。幸い、家人は遅出なので、車で行ってもらえれば迎えは不要になる。スケジュール帳を開くと、今月はガラガラである。

 そして、今日の予定は、ホテルでランチになっている。子供が帰省した時に3人で使おうとしていたが、子供の帰るのが早まって二人で行った。そして、一枚残った家人の分をくれたのであった。

 今日が節目の日であることで、また一歩死に近づいたことになる。幸い、“(さらに一歩死に近づいて)おめでとう”という言葉を受けてないので、まあ、いいとしよう。厳密に言えば、節目の日だけではなく、日々近づいているのであるが、意識する日と言えばやはりバースデーであろう。六十歳を越えれば、何があってもおかしくない。現に新聞のお悔やみ欄には自分と同じくらいの方の記事が良く出ている。やはり苦(9月)しんで死(4日)ぬのだろうか。

 幸い、体調不良の原因やめまいの原因は分かっている。小学校向けの資料作りが進んでないことである。云わば精神的なモノであろう。平たく言えばストレスである。歳を重ねていいところは、こういう状況は過去に幾度も経験しており、ある程度対処方法が分かっているということである。眠っても良くならないことは分かっていた。

 朝8時に家を出る。後から悔んだが会社員の出勤時刻に重なったことだ。そこで歩いて行こうとしたが、体調がすぐれないことと、前の停留所を出たというランプが点いていたので、バスにする。ラッシュなのか、バスはなかなか来なかった。5分ほどで目的地に着いたので、セカンドオフィスへ入り、モーニングを食べながら、資料作りを始めようとした。しかし、意欲が湧かず、今読んでいる山の本が面白くて、一つ調べただけで終わる。

 そして、昼食は豪華ホテルのバイキングランチである。食べすぎないようにしようと自戒しながら店に入る。ガラガラである。一人なのに4人掛けテーブルを勧められた。今回で2回目であるが、メニューが変化していて良かった。不思議なことに、体調が悪くても腹は減るのである。

 まず、ファーストプレートである。

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 時間はたっぷりあるので、一口入れて口の中がなくなったら次というふうに食べる。本を読みながら食べるのである。

 続いて、セカンドプレートである。

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 そろそろ、満腹になったが、ゆっくりと飲み物で租借しながら楽しむ。

 そして、最後はデザートとコーヒーで締める。

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 食べてから帰宅して寝ようと考えていたが、外を歩いているうちににわかに元気が少し出たので、図書館に入る。

 必要なかったがトイレを我慢し、飲み物も摂らず集中すること3時間で概要が出来上がった。人間は現金なもので、出来上がったとたんに体調の悪さが遠のいていった。もう大丈夫だろう。

■「この地上において私たちを満足させるもの」(乙川優三郎著、新潮社、2018年)を読む。

「~小説をあきらめるのは修行も苦労も足りなかった。」

ある日どこかで倒れてそのまま死ぬようなことがあっても、それはそれで自分の人生だろうと思う。」

「~持病や産みの苦しみなど怖れるに足りない~」

「~たとえ結果が同じことでも下から勝ち上がってこその勝者でしょう~」

「~本読みからすると収穫の喜びを知らない淋しい人生ということになります~」

「お金と時間があるのにすることがないなんて可哀想です」

「~精神の疾患でなにもする気になれない。」

「死を覚悟したときから表情と口だけは明るく保ちながら痩せ細っていった~」

「人ひとりがこの世から消えて、生きている人間がその形見や蓄えを取り合うのは見苦しいことであった。」

「ただの衝動でろくなものは書けないからね」

「~健康な体で心を病む場合もあるし~」