書き入れ時

■「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」(羽根田 治他3名著、山と渓谷社、2010年)を読む。
 やっと手に入った。どうしても読んでおかなければならない本であった。それは自分も類似の経験をしているからである。また、文中にも出てくるが、トムラウシ山と剣御前小舎は似たような環境である。ということは、夏の立山でも起きうることも理由になっている。
 このパーティが崩れている横を別の6人のパーティが追い越していることから、原因は天候ではないと思っていた。この本の中で医者の解析が一番説得力があった。低体温症についての知識がないため、対策が採れなかったということである。ここに書かれている症状は別山乗越で体験がある。寒さと強風で進めなくなった。この時、心臓の回りだけに血液が回っているような錯覚に陥った。吹雪が下から吹いてくるのである。立ったままで風に押し戻される。5mも行けば剣沢雪渓に転落してしまう。ほふく前進でハイマツまでたどり着いたことをさながらに思い出す。やはり、生と死のはざまには知識が不可欠であることが裏付けられた。少なくとも低体温症の症状は克明に解説されている。なんどもなんども書いてあり自然記憶に残りやすい。発症から死亡まで2時間というのが衝撃的であった。高山の場合は震えが来ない場合が多いらしく、自覚症状がないまま亡くなるという。
 今回の主な原因は、強風下で無防備なまま1時間の待機であったようだ。この結果、体温が下がり低体温症に陥った。また、個人差は日頃のトレーニング状態に依存するとのこと。今回同じルートを通った別パーティは、15kgのリュックで3回登山などシュミレーションを行っている。
 この遭難事故の原因は「ガイドの判断ミス」ということであった。ためしに、山岳ガイドの資格認定を調べてみると受験資格で300日の山行経験が必要であった。年間30日としても10年である。同じルートで何回も似たような事故が起きており経験が生かされていない。これは、自分だけは大丈夫との思い込みやガイドに頼りっぱなしの登山者が増えていたことらしい。
最後に、登山者としての自立が重要であるとまとめてあった。

■書き入れ時
 正確な意味は分からないが、商品が売れるタイミングであろうと想像がつく。
机の上に置かれたお金をザルなどに集めるほど儲かる場合に使うと考えて漢字で
書くと「搔き入れ時」と長く思っていた。しかし、これは誤りであった。正しくは「書き入れ時」とのこと。このように、正しいと思っていたことが違っていたことが分かると脳が活性化する。まだまだあるような気がする。