モノは要らない

■「旅する女」(筒井ともみ著、講談社、2012年)を読む。
 ひとりの旅行コーディネータの交通事故死がきっかけで見知らぬ3人が知りあう。年齢が50代半ばの女性の生活がうまく書かれてある。『携帯というのは便利だが、無神経な文明の産物である』と言わしめて、よ=し!と思った。便利と豊かな生活は違うのである。ここにも『サウダード』が出て来た。ポルトガル語である。意味は『遠い、あるいは消えてしまった人や物への、深い思い、甘美な悲しみ』としている。

■モノは要らない
日経新聞からの抜粋である。
「モノをたくさん持つこと。高いモノを買って見せびらかすこと。そうした消費にアラサー(30歳前後)以下の人々が関心を示さなくなってきた。
意に沿わない仕事でもとにかくカネを稼ぎ、高いモノを買い、見せびらかして悦に入り、60歳でリタイアした後ののんびりした生活を夢みて頑張る。そんな「古い約束事」でモチベーションを保つ手法は、成り立たなくなってきたわけだ。
 漫然と過ごせば先進国の普通の人々には失業、孤立など暗い未来が待つ。
 欲望の方向は「モノ」から「価値ある体験」に移る。
従来型の消費に興味がないからと若い世代の研究や攻略をやめたり、相変わらず小手先のデザインなどで新商品を売り込もうとしたり。そんな姿勢は企業にとって不毛でもったいないし、若い世代にも不幸ではないか。」