創作

■創作

◎桜散り色は変われど道一つ   禅智

 傘を差そうか、差すまいかと迷うほどの雨が降っている。空は、この地方独特の鉛色である。小学校の桜の木も葉桜になってきている。代わりに、庭に植えてあるチューリップや芝桜が勢いを増している。「花の色は うつりにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしまに 小野小町 (長雨に桜花の色は移ろい、私自身もつまらない物思いにふけっているうちに盛りの時を過ごしてしまった)」という百人一首が浮かんでくる。
 人の心は、この花のように変わっていくが、自分の心は変わらないでいたい。

■「常念岳 一ノ沢の死角」(梓 林太郎著、光文社文庫、2012年)を読む。
 今年は登りたいと考えていた山である。ちょうど計画していたルートであったため気になって手に取った。数編があったがお馴染みの山や地名が出てきて面白かった。沢山の山岳小説を書いておられる。短編というのがいい。