生き方

■創作

◎雨上がり枝の滴が弾け散る   禅智

 夜半まで雨だったらしい。出勤時は道路が濡れていた。乾いている場所もあったことから夜中には止んでいたのだろう。雨上がりの朝、短い手紙は届かなかったが、メールが届いていた。何となく予感がしてパソコンを立ち上げ夜明け前に起きてから返信をし、再び床に入る。
 外は歩いていても寒いくらいだ。手袋はまだ手放せない。
 太陽が照っていなかったので、水滴のキラキラはなかったものの、小枝に滴る水滴にこころを踊らす。
 この滴は、周りの枝に付いている雨が少しずつ集まって出来たものだ。少しずつ努力して大きな水滴になろうとしているようだ。しかし、大きくなり過ぎて、おそらく表面張力を超えたり、風が悪さしたりすると落下する。その様は、爆弾のように弾け散る。これまでの小さな努力の積み重ねが、一瞬で無と化す。

■「寂聴・生き方見本」(瀬戸内寂聴著、扶桑社、2010年)を読む。
 対談の単行本化であったが、すべて鬼籍に入っておられる方ばかりである。
「私は人間が好きだから、小説家になった。」
「死ぬまでペンを離すな 作家であることを忘れるな」
「この人たちの全てが、今は浄土に旅立たれて、この世にはいない。私ひとりが取り残されているとは。」
「小説って、やっぱりコンプレックスがいちばん根もとにあるような気がする。」
「芸術家は名をのこすじゃない。職人は残さない。」
「やっぱり『英雄色を好む』というのは、私、絶対あると思います。」
「念が凝ると髪が逆立ちますよ。」
「癌というものは切っても死期を早めるだけだから、ガンとして切らせなかった。」
「数珠で数える」
「天台は仏教学の総合大学」
「やっぱり文学というのは悪魔の参加がいるんですよ。」
「文学の究極はね、宗教ですからねえ。」
「楽しいんです。ですから、努力というんじゃないんです。」
「恋愛しなくちゃ仕事が涸れてしまう。」