根巻きとレベル

■根巻きとレベル
 いい天気であった。しかし、油断は禁物であり歳相応にベストを着用する。
 午前中は、昨日の竹ほうきの製作である。出来た人は実際に履いてみて具合が悪い場合は調整という授業から始まった。
 続いては、根巻きである。掘り起こした樹の根を崩さないように移動に備えて巻くのである。四つ掛けと呼ばれている。しかし、今日は模型での練習である。三人一組で行い。自分は2番目であった。出来上がりはきれいな編み目模様が出来ていた。明日は教材を変えて行う。
 午後からは、測量であった。自分の無知さをあらためて痛感した瞬間でもあった。よく工事現場で望遠鏡のようなものと物差しで測っている作業を測量と思っていた。
そして、この業界の測量は体の部位で行うものと考えていた。
 しかし、午後から登場した機材は『これ』であった。
 この機材の名前は『レベル』という。機能は高低差を測定するものである。
生徒の中でも使用経験のある方が3名おられ、各グループに散らばった。使い方はいつものように懇切丁寧である。
 最初に、組み立て方と終い方。続いて方向の合わせ方。そして、ピントの合わせ方。最後は実際の測定であった。
 学校にあるのは、正確には『オートレベル』という。もの差しのようにメモリの付いた棒を『スタッフ』という。
 このレベルで基準の高さを定める。そして、対象物の高さを測定し、その差を求めれば、高低差が計算できるという原理である。
 さらに、驚くべきことに、距離も測定できるという。精度は10cm単位であるが、実用に役立つことが多い。
 全員で校庭に出て、野球のボールを投げて、距離を測定し巻き尺の数字と比べるのである。難しいのは、スタッフのメモリの読み方である。少しでも傾いておれば数字は狂ってしまう。その対策というのが面白かった。スタッフを持っている人は、四六時中ゆっくり前後に揺らすのである。望遠鏡で覗くと、メモリが上がったり下がったりする。その一番下がったメモリの値が必要な値である。数人は1cmと狂わず当てていた、自分は30cmほどずれた。経験者によるとこれくらいは誤差という。
 しかし、何となくブルーになった・・・・・。トホ。

■「木に学ぶ」(早川謙之輔著、新潮社、2005年)を読む。
「檜(ひのき)はそれだけで家が建つ。建具にも家具にも水周りにも使える唯一の木だ。」
「檜(ひのき)舞台という言葉がある。たしかに歌舞伎の舞台も能の舞台も檜(ひのき)だが、歌舞伎の板は厚く、能の板は薄いと聞く。」
「〜たとえ寿命は縮まっても、この仕事は手掛けるべきではないか、〜」
「あなたは立派にながく生きた。老いて今、静かに枯れようとしている。」
「人間の一生は短い。この先、真摯(しんし)に生きて寿命を全うしたい。」
「才能がない、病弱と言うのは止めよう。できるかぎりの一日一日を送ろう。」
「スギ〜Y先生は四種説である。杉の葉が含有するジテルペンという物質を分析した結果〜若狭湾富山湾に残った母樹が全国に広がっていくあいだに、秋田系・白山系・太平洋系〜屋久島はそれら三系統の物質すべてを含有する別種の系統である。」
「〜ある教会の地盤を固めるために何百万本もの長い木を打ち込んだ〜」
「たしかに金具の締結力は強い。しかし、決して長寿ではない。」
「〜楠(くすのき)は関東以西にしか自生しない。」
「栗は硬くて丈夫な木であり、水にも強い。今日でも建物の土台や鉄道の枕木に使われている。」
「とても硬いーー樫(かし)、硬いーー欅(けやき)、やや硬いーー栗、やや軟らかいーー檜(ひのき)、軟らかいーー杉、とても軟らかいーー桐」
「割るという技法は素晴らしい製材法なのである。」
「師部と木部の境に形成層があるのだが、小さな細胞の連なりで、目には見えない。この形成層は分裂組織で、内側に向かっては木部となり、外側に向かっては師部となるのである。」
「師部は五年から十年後にコルク化という別の分裂をし、おおよそ一年後に樹皮化して死ぬ。」
「〜木は根に支えられ〜一番長い枝を半径にした円周まで根は延びているという。」
「水田なら『シキ』と呼ばれる水漏れ止めの地層があり〜」
「落葉するのは、葉の老化、温度の変化、木の体内時計によるらしい。いずれにしても葉柄の断面方向に裏層と呼ばれる組織が形成され、その部分から剥がれ落ちる。」
「〜落葉樹〜かならず裸木の時期がある。〜常緑樹でも葉は交替している〜」
「胡桃(くるみ)や赤松など、木は葉などから出る化学物質を地面で活性化させ、雑草など他の植物の生育を妨げることがある。また、根から同様の成分を出し、他の植物を追い払うことがある。この作用をアレロパシー(化学的相互作用)という〜そこには自分の実も発芽できない。桜の下には桜は生えないという。」
高野槙(こうやまき)〜水に強い〜」
「かくも厄介な灰であるが、〜農作物の肥料、染織の触媒剤、木の実や蕨(わらび)などのアク抜きなどは良く知られている。」