廃業宣言

■廃業宣言

 今日の予定はタイヤ交換である。自分はもう1シーズンはタイヤ交換は大丈夫だと考えていたが、家人が定期点検の時にタイヤ交換を勧められ、購入していた。そのため、車屋さんで普通タイヤからスノータイヤへの交換をしてもらえることになった。

 天気予報では来週から雪予報である。全ての生活のスケジュールをこのタイヤ交換に合わせて過ごした。

 午前中にフォレストリーダーの方から連絡が入り、植樹した無花粉スギの雪囲いをしたいのだが付き合ってもらえないかと電話が入った。タイヤ交換は午前中で終えるので午後は空いている。待っている時間で、雪囲いの道具と材料を準備する。電話では見に行くだけとなっていたが、50cmほどの幼木一本である。それならやってしまった方が早いと判断した。

 迎えに来ていただき吉峰山へ向かう。自分は造園業の看板を揚げているが、雪囲いは請けていない。理由は、道具が無いからである。やり方は、学校でしごかれた。

 バールで穴を開け、コンベックスで距離を測り、カケヤで竹を埋める。そうして、頭は3重巻のワリを入れて男縛りである。

 横は、巻き結びで竹を縛りながら最後は男縛りである。ところが、巻き結びが出来ない。巻き結びは、もっとも簡単な縛り方で最初に習う。造園業をやるには、一方向からだけでは駄目で、横については左右にを上から下からと4通り、縦も同じように4通り、そうして上だけを結ぶもの、計9通りを身体が覚えるまでやらされた。従って、今回も自動的に手が動いていくものと考えていたが、忘れてしまっていた。これに動揺した。そうして、もうこれで終わりだという気持ちが膨らんで来た。ロープワークは常日頃なじんでおかないと肝心な時に効力を発揮しない。部屋には練習用のロープもある。

 がっくり来た途端に、猛烈な疲れが襲い、適当に縛ってしまった。ここで、「造園業廃業宣言」を出すことにした。

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 今年は、アルバイトもあり剪定作業も請けなかった。今後は実家の樹をいじるだけになろう。

■「ど忘れ書道」(いとうせいこう著、ミシマ社、2020年)を読む。

「忘れてしまった言葉を一枚の紙に、そのたびごとに丁寧に書き記していく」

「何を忘れるかは、その人自身をあらわすからだ。」

「若いアイドルグループの顔の区別がつかなくなって久しく、それはまぎれもなく老いのせいだろう~」

「~“柴”を間違えた。”紫“と書いてしまった~」

「私の脳、および手の急激な衰えは何に起因しているのか。」

「ど忘れは論理を超えているから、まさかと思う言葉がまさかと思う場所で隠れてしまうのだ。」

「~年をとるというのは相手まかせになること~」

「自分にとって大切なものでも人は平気で忘れる。」