リーダー論

■「ひっ」(戌井昭人著、新潮社、2012年)を読む。
 今年の芥川賞候補になった作品である。まず、このタイトルで魅かれた。
 タイトルは伯父さんのニックネームであった。文句なく面白かった。自分もこんな小説がかけたらなあと思った。どことなく退廃的で、ミミズが異様に強調されており、主人公が山岳部にいたところから山に関する記述がある。海外への逃避旅行もあり、読後感が最高であった。

■リーダー論
 週間ダイヤモンドからの抜粋である。
「私が見てきたダメな経営者というのは、圧倒的に情に流される人が多い。ムラ型共同体である日本のカイシャ・システムにどっぷりつかり、良きムラ人の代表者として出世の階段を順調に上がり切ったタイプの人は、十中八九、情に流されて判断の時期と中身を誤る。
 一方で、情に背を向けて合理にひたする突っ走る人もうまくいかない。血も涙もない人だと世の中で非難される人がいるが、ああいうタイプの人ほど、個人的に話をすると意外と悪い人はいない。だが、だいたい共通しているのは、情理に弱いのである。要はいわゆる人間音痴なのだ。その弱さを自分でも知っているから、情理や情念から逃げる。いわゆるMBA的な経営に凝り固まった経営者もどきが失敗するのは、情理から逃げるからである。
 情理から逃げても、合理から逃げても、今どきのリーダーはつとまらない。そしてこの狭間で悩む訓練は、若いときからやっておかないと、トップリーダーになってから突然身につくものではない。むしろいきなり対峙する情理と合理の軋轢の巨大さ、溝の大きさ深さに圧倒され、そのストレスに押し潰されてしまう。それこそ課長レベルのミドルリーダーの時代から、この狭間にどんどんはまり込み、自分なりの克服の方法論を見出していくしかない。いわゆる「火中の栗」は拾うべし、である。
 リストラ局面やマイケル・サンデルの命題にように、情理と合理が最終的にぶつかり合う局面では、全ての人がすっきり納得できる論理的な解はない。だから誰よりも真剣にその問題を考え尽くし、悩みつくしたうえで、最後は何とか折り合いをつけていくしかないのだ。
 そこにはリーダー自身の性格や個性、価値観、哲学も深く関わってくる。だから共通普遍のスタイルなどないのである。各人各様、自分のマネジメントスタイルや自らのストレスとの付き合い方を構築していくしかない。そのためには、とにかく逃げないことだ。」

「ふ〜〜ん」という感想をもった。