サバイバル術

■「絶対に死なない」(加藤幸彦著、講談社、2005年)を読む。
 すごいの一言であった。印象に残った文を書きとめることにする。
「登山のルールはたった一つである。それは、『山で死んではならない』ということだ。」
「『危険』と『困難』を識別する能力を持つことだ。困難は克服すべきものであって、危険は回避すべきものだ。危険を克服しようとして事故に会う。」
「いかなる困難も技術、経験、そして体力と気力で克服することができる。しかし、危険はどれだけの技術や体力があっても克服できない。」
「山の天気はすぐ変わるが、私は焦らない。吹きさらしの中肌を更していては凍傷になってしまうのでツェルトをかぶって休息し、気持ちを落ち着かせる。」
「一番重要な体力トレーニングは計画を綿密に立てて行った。12〜18kgの荷物を背負って自宅近くの高度差500mの小さな山を毎日登り降りした。その際、心拍計を胸と腕に付けてデータを取り、トレーニングの成果を確かめた。」
 著者は、三浦雄一郎氏のエベレストからのスキー滑降のスタッフを務めている。若い時から会社員時代の話、定年後の話も十分網羅されており、わくわくしながら読み終えた。
 「雪山の遭難は一生に一回しか経験出来ない。それは、二度目はないからである。」

■サバイバル術
 購読メルマガからの抜粋である。
「生死を分ける第一のステップは、とにかく冷静に行動できるかどうかだ。冷静さを保ち、現在地を動かない。衣服をチェックし、適正な体温を保つことが肝心だ。
 少々大げさだが、恐怖は人を殺してしまう。パニックは人によってさまざまな形態を取る。たとえば、日頃都市部で暮らしている人が自然の中で遭難したとき、方向感覚を失い、普段理性的な人も不合理な行動を取る錯乱状態を「ウッズショック」と呼ぶ。こうした状態を含めて、多くの場合、本人がパニック状態を自覚することはない。そこで手遅れになる前に、自分をコントロールすることが必要だ。
遭難した場合、グループのほうが助かる確率は高まる。1人だけでは絶望しやすく、絶望もまた生存には非常に危険なのだ。森で迷うなどといった絶望的な状況の中で、最も生存率の高い年齢層は、6歳以下の子どもだというデータがある。悲嘆にくれず、暖を取ることや食料、水を得るという緊急時の基本的な欲求を優先するからだと考えられている。
 もしも1人で遭難した場合は、極力そこを動かないようにする。サバイバルの基礎知識を動因してシェルター、火、水を確保して、救援を待つべきだ。
救援が来るまで生き残るために、目安となる数字は「3」だ。以下のような法則を覚えておくとよい。
3分以上体に酸素が行き渡らなければ死に至る。
熱中症や低体温症を避けるため、3時間以内には雨や雪、もしくは炎天下の日差しや極度の低温、あるいは高温から体を守る必要がある。
3日以内には水分と睡眠をとる必要がある。
食事は3週間以内にとらなければならない。
心が落ちついたら、次は飲み水を探すことが優先される。特に砂漠では、水がなければ心と体はすぐに機能しなくなる。すでに飲み水を保有している場合や、極寒、身を焦がすほどの炎天下ではシェルターを探すか、あるいは作る。寒さや暑さから身を守る適当なシェルターに入り込めば、体力の消耗を避けることができ、生存への気力を保つことができる。
意外なことに、食料に対する優先順位はそれほど高くない。「3の法則」を見てわかるように、すぐに食料を探さないと生命が左右されるわけではないが、一方で、食料と火は心理的に大きな効果をもたらすことも覚えておこう。」