ベネフィット・ファインディング

■「誰かが足りない」(宮下奈都著、双葉社、2012年)を読む。
 女性かと思いつつ男性かもしれないと思いながら読み進んだ。着想が面白い。『ハライ』という名前のレストランを予約するまでだけで6話書かれてある。飽きさせない筆力は習いたいと思った。

■ベネフィット・ファインディング
 日経ビジネスからの抜粋である。
「ベネフィット・ファインディング(Benefit finding)」──。
 これは苦しみを経験することで、それまでは何でもないと思っていた出来事に意味と価値を見いだす過程を指す。
 数年前から医学の世界で注目されている概念で、慢性疾患や不治の病に侵され、「病とともに生きる」ことを強いられた人々の中に、絶望感が生じながらも生きる力を逆に強め、普通の状況の中にさえも価値を見いだす人がいる。そうした現象を受けて生まれた概念である。
ここでありのままを受け入れることに失敗すると、次第に逃避行動が始まってしまう。人間の弱い部分に支配されるようになってしまうのだ。
 困難な状況にあることを誰かのせいにしたり、自分を正当化するための理由を探したり。時には、自分の困難を忘れるような行動に無理やり走ったり、自分はダメな人間だなどと自尊心を著しく低下させ、生きる力さえも失っていくことがある。