ブラック企業とホワイト企業

■「『老人優先経済』で日本が破産」(山下 努著、ブックマン社、2013年)を読む。
 ある意味強烈であった。知らないことだらけである。どうしても引用が長めになった。
「日本企業はマイナス成長時代に入って、若者の新規採用を調節弁にしてきたのです。賃金の高い中高年の雇用を守る一方、新卒ゼロ採用といった手段で若者の未来の扉を閉ざしました。大量採用する企業も一部はブラック企業と化し、激務のためにうつ病でやめていく若者が社会問題になりました。大量の非正規雇用社員が生まれ、晩婚化、非婚化、少子化に拍車がかかったのです。」
「ポジティブな気分で生きるのは大切ですが、悪い事態を想定し、準備をしておくことも必要です。」
「車は持たず、家は建てず、物は欲しがらない。」
「月額約1万5000円の保険料は〜重すぎるのです。」
「今も若者は高齢者に夢を食べられ、所得を移転させられ、結果として日干しにされているのです。」
 伊丹万作の著書『戦争責任者の問題』からの抜粋;
「 さて、多くの人が、今度の戦争で騙されていたという。みながみな口を揃えて騙されていたという。私の知っている範囲ではおれが騙したのだといった人間はまだ一人もいない。」
「そして、騙されたものの罪は、ただ単に騙されたという事実そのものの中にあるのではなく、あんなにも造作なく騙されるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになってしまった国民全体の文化的無気力、無反省、無責任などが悪の本体なのである。」
「『騙されていた』といって平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でも騙されるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによって騙され始めているに違いないのである。一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない。」

ブラック企業ホワイト企業
週間ダイヤモンドからの抜粋である。
ブラック企業ホワイト企業も、共に経済合理的に経営しているのだとすると、両者の最大の違いは、ブラック企業は社員が辞めても惜しくないと思っているし、ホワイト企業は社員に辞められることを損失だと思っていることだろう。
 もう1つの要因は、社員教育の効果の有無だ。研修であれ、仕事の実地経験(いわゆる「OJT」)であれ、社員に教育機会を与えて、その教育によって社員のスキルが向上するなら、教育投資を行った社員が辞めることは惜しいはずであり、これがホワイト企業の事情だろう。
 他方、ブラック企業では、会社から見て大半の社員は雇われた段階から大きな進歩なしにできる仕事をしていて、ただ大量の労働を安価に提供してくれればいい。そして、働いていても進歩するわけではないので、辞めたら次の社員を補充すればいい。企業側から見ると、「使い捨て」に合理性があるのだ。
もう1つ現実的な問題が、会社都合退社と自己都合退社の差にあるのではないか。現実の職場でしばしば問題なのは、社員に重い労働を提供させつつ、これに耐えない社員を自己都合退職に追い込むような、会社のやり方だろう。
 まず「自己都合」で辞めた場合、退職金が半減するケースが多い。ただし、そもそもブラックに近い職場では退職金が出ない場合が多い。
  会社としては、退職させたい社員に継続的にプレッシャーをかけて精神的に参らせつつ、「あなたには、この会社で働いてもらう場所がない」「あなたの名誉のために、自己都合退社ということにしてあげる」などと言いくるめて、社員が自分から辞めた形(自己都合退社)に持ち込もうとする。
 しばしば報道される「追い出し部屋」の状況は、精神的な職場環境としては限りなく「ブラック」に近いが、会社は合法的に社員を自己都合退社に追い込もうとしている。これは、社員にとって「ひどい」状況であると同時に、会社にとっても非生産的な行為だ。しかし会社にとっては、現在ある種の経済合理性があるので実行されている。」