もめない遺言

■「停年退職(上)」(源氏鶏太著、河出文庫、2007年)を読む。
 定年ではなくて停年というのがいい。この人の作品は中学時代に読んでいたが流石に当時は、停年は考えていなかったと思う。今読むと面白い、というか見につまされる。半年後に停年を控えた会社員の物語であった。
「辞める人間は、自分の辞めたあとの事業計画を審議しながら、何ともいえぬ寂寥を感じているんだよ。」
「淋しくて、退屈な日々が続くに違いないのである。いってみれば、孤独になるのである。」
「停年退職者を大事にしない会社は、結局、大発展はのぞまれない〜」
「今ごろ、どうしていらっしゃるのだろうか」
「いったん、停年退職したら生まれ変われ、ということなんですか」
「平時が大事ですよ」
「金を失うことは、ちいさく失うことである。名誉を失うことは、大きく失うことである。ただし、勇気を失うことは、すべてを失うことである。」
「そのころ、俺は、どこに、どうしているのだろうか」
「もし失敗していたら、今ごろは、親子心中していたかもわからない。」

■もめない遺言
日経新聞からの抜粋である。
 「公正証書遺言を作るには公証役場まで出向いて遺言の内容を公証人に伝え、公証人が遺言を作る。作成時には、証人2人以上が立ち会う。手数料は相続人ごとに必要で、各人の相続財産額に応じて変わる。これに対し、自筆証書遺言は証人が要らず、いつでも自分で書くことができる。誰でも作りやすい上に、費用も掛からない。自筆証書遺言を書いてみることで自分の考えを整理することもできる。まず自筆証書遺言を書き、それを基に、時機を見て公正証書遺言を作ってはどうだろうか。
 元気なうちは「まだ遺言なんて」と思いがちだ。「しかし実際には、具合が悪くなってからは、なかなか書けないもの。定年退職する60歳前後が遺言を書く時期の目安」と灰谷さんはアドバイスする。
「(遺言を)遺書と混同しないことも重要。遺書は亡くなる間際に書くものだが、遺言は元気なときに書いておきたい」
 では、実際に遺言を書くときには、どのような点に注意すべきなのか。灰谷さんの助言の下、自筆証書遺言の一例を挙げよう。日付、氏名、押印、そして遺産の分け方の指定が必須となる。自筆証書遺言では、これらが全て自筆で書かれていないと無効になる。
●その1
 不動産は土地・建物に分け、住所ではなく登記簿謄本に記載の所在・地番・家屋番号を書く。
●その2
 金融商品は金融機関名、支店名まで。金額や商品名までは書かない。割合で指定するなどすると、引き出しや預け替えにも対応できる。
●その3
 その他の財産があれば、これも忘れずに記載する。
 最後に忘れてならないのが、遺産の分割方法を決めた理由など親の思いを託す「付言事項」だ。なくても遺言としては成立するが、ここに分割の理由を記しておくことで、遺言に納得してもらえる可能性が高くなる。」