型落ちベテラン

■「停年退職(下)」(源氏鶏太著、河出文庫、2007年)を読む。
「僕にも経験があるが、どうしても人間が卑屈になる。」
「諦念退職」「あきらめることだよ〜」
「嫌になっても、自分で足を運んで、頭を下げ続けなければならないのだ。屈辱の思いを繰り返さなければならないのだ。」
「入社のときも一人で入って来たのだ。だから、停年退職の日にも、一人で去って行くよ」
大過なく、とにかく、大過なくであった・・・・・」

■型落ちベテラン
週間ダイヤモンドからの引用である。
「50代シニア、とりわけ管理職者の再雇用時の問題は、現場プレーヤーとしての経験・スキルの陳腐化だろう。長く管理職をやっているうちに、次第に「管理の人」になってしまい、本来の現場での仕事捌きや判断力が鈍っていく。また、いくつか職場や仕事が変わっても、組織管理中心の仕事が多いため、第一線業務からは遠くなり、現場実務は「知っていても、できない」ものが多い。管理者の多くは、一頃いわれた「OKY」:おまえ、ここで、やってみろ、にたじろぐ。
研修では、会社が期待する65歳までの働き方や70歳現役の人生設計を話すが、参加者は間近の役定とその後の処遇、退職金計算の方に関心がいく。肝心の働き方の方は、60歳定年まではなんとか見えるが、それ以上の先のことは大半の方が、よくわからない、というのが実感だ。企業は65歳までの戦力化をあれこれ腐心するが、当のシニアは、それほどの現実感をもって役定・定年後を考えているわけではない。
昇進・昇格を目指す上り坂の働き方はわかっていても、上手な下り方は誰も教えない。筆者の考える上手な下山とは、以下のような一連の流れのことだ。
*時期がきたら、現実の職位や肩書きを返上し未練を残さず、新たな役割を前向きに受け入れる
*新たな仕事に就いたら、経験や能力の強みを活かせる限りは活かし、不足は素直に学びなおす
*下山中、自己を活かせる場があることを感謝し、出向や応援仕事など“途中の寄り道”も楽しみながら麓に下りていく
*下山ではあるが、山を極めた自分の歩みに充実感を感じながら、65歳までのセカンドキャリアの10年前後を「職業人生の統合期・完成期」と捉え、生涯自分を活かすプロフェッショナルな専門領域とパーソナルスキルを作る
*在社中は貢献意欲と役立ち感を失わず、退社=下山後はまた新たに登る丘を探し70歳位まで元気に頑張る――こころの内は、下山ではなく「坂の上の坂」を歩み続ける気持ちだろう。」