ある会話

■ある会話
 今日はファミレスでランチを食べる。正月休みなのか混んでいる。食後はドリンクバーをサーフィンしながら本を読んでいた。一つ置いて左のテーブルに男性が二人座っている。

 一人は恰幅がいいが頭がバーコードでA氏としておこう。向かい側には、少しやせてまだら白髪のB氏とする。B氏は外見から幾分貧相に見える。
 お互いに「ちゃん」づけて呼び合っていることから、幼馴染であろうと推定される。
 気になったのは声が大きくなって嫌でも断片的に聞こえる。退職とか老後とか聞こえるので、本を読むのを中断し、スマホを見るふりをして会話をメモしていた。しげしげと見るわけにもいかず、断片的な単語から推測するに、A氏が今年退職するらしく、早くに辞めたB氏に相談しているらしいということが分かった。あまり人の年齢には自信がないが、65歳と見ていいだろう。
 B氏がA氏に厳しいことを言ってA氏が興奮して大きな声になっているようであった。
 その内容は、断片的な会話を補足推定すると、A氏が退職後の生活のモデルをB氏に求めたが、B氏は、今頃になってそんなことを言っているようじゃ、狭い会社生活の中では勝組だったかもしれないが、これから多くを過ごさなけれなければならない人生においては落伍者であると容赦ない。
 A氏は腰が痛くて辛い日々であるが、65歳以降も働かなければならないとのこと。これに対しB氏は、生涯現役の人もいるし、70歳でも40代の体力の人も多いし、財を築いた人もたくさんいるが、それは、お前や俺には当てはまらないとはっきりと断言した。
生活のために金がいるのは仕方がないが、老後はお金の使わないような生活をしながら豊かな生活をめざさなければならないという。お金のことなんかは、最優先で60歳になる前に解決しておくべきだと辛辣である。
 そして、A氏にお前は退職後にはすることがないのだろうという。
 A氏が苦し紛れに退職後は奥さんと海外旅行へ行くといったら、B氏は、退職後に高級車を買うとか贅沢な旅行という短絡的な散財を考えているようでは、話にならない。
 豊かな生活というのは、日々の生活の中にあるので、一時的な快楽は半年もすれば薄れてしまうという。しかも、奥さんは賛成していないだろう?とうそぶく。
 何もしたいことがない、出来ることが無い、そういう奴が60歳以降も再雇用で働くのである。そして、65歳でチョンになったら、お金はあるが使えず、することがなく一日中テレビを見たり、クレーマーになったり、自分が働いていたころの役職にすがりついて、元会社役員などという名刺を作ったりしながら、だんだんと相手にされなくなって朽ちていくのだという。
 そして、身体が動かなくなったら、あれもしたかった、これもしたかったと思い煩い、自分の人生は何だったんだと嘆きながら終わっていくらしい。
 二人が帰った後考えさせられたね。しかし、どんな人生を歩もうとその人の自由だろう。
 自分のように第二の人生を70歳からと考えている者にB氏はどう言うだろうか。
 だぶん、「あんた、ダラけ!」だろうなあ。まあ、ほっといてくれ。