キラズ山

■キラズ山

 このところ、天気予報が出るとがっかりしている。梅雨入り情報が出始めたためである。多くの年で、4月、5月は県外の早春の山を歩いているが、今年は県境をまたいでの移動は自粛しろ!、山へは登るな!という風潮が大きい。この歳になって、世の中の状況を無視して決行するほど非常識ではないと思っているが、歯がゆさはある。これはフェイクだろうと思うが、県外ナンバーの車を見たら、石を投げられたり、傷を付けられるとも聞こえて来る。イジイジしていたら、くさのさんから、「ギリギリ登山」はどうでしょう、と提案があり、これは面白いと話が数秒でまとまった。

 県境にある山はいくつかある。自分の能力的に何時間も登れないので、岐阜県との県境にある「キラズ山」になった。県内でカタカナの名前はそうない。まあ、そんなに遠くはないので、7時半ごろにピックアップしていただく。双方とも初めてである。ガイドブックは積んである。富山百山に登録してあるとは言え、比較的マイナーな山なので登山口探しが全工程で一番難航すると考えていた。ガイドブックに従って、神通川の橋を渡り、右急カーブを曲がらなければならない。少し走ると「らしいカーブ」があったので曲がったら、車ではいけなかった。後で、ガイドブックを確認したら、5.3km走った後の右カーブであった。

 通行止めの鎖は空いている。

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 車で侵入したが、倒木があるのでバックして邪魔にならない場所に停める。

 ここを歩いて越えていく。

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 また、倒木である。30分も歩いたか、ここも越えていく。

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 そして、この風景である。道に倒れた木は太さから考えて10年以上経っているのでおかしいという感覚が芽生えて来た。何せ、いままでに山で迷った回数は数知れず、知らず、知らずのうちに、感性が育まれていたようだ。この道は違うと確信を持った。

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 戻って、ガーミンで確認するくさのさんである。その結果、ここからも行けるが、この状態なので、別の道を探すことになった。

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 別の道に行くと、今度は「通り抜け禁止」の標識にぶつかる。こっちは、通り抜けるのではなく、登山のために作業道に停めるのでそのまま通過する。しばらく、走るとユンボを扱っていたあんちゃんが降りて来て、「標識が見えなかった?」というので、「通り抜けではない」と答えると、柔和になり、もうしばらくすると工事車両で通行できなくなると説明する。仕方がないので、戻って車を標識前に停めて長い林道を歩く。

 ここが、急右カーブの場所のようだ。こんなん普通に走っていて分かるはずはないではないか。今回、くさのさんのガーミンのお陰て判明した。

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 我々は二人静かに林道を歩いた。

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 天気は上上である。風も吹いてくれていい歩きである。林道だからかもしれない。

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 このルートは林道歩きが1時間ほどあり、登山も1時間とガイドブックには掲載されている。林道を歩いていると、ウドが成っていた。新芽もあるので、帰りに獲ろうと、写真だけ撮る。

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 1時間ほど歩いて、登山口に到着した。ここまでで、かなり体力を消耗している。しかし、地図で見ると、等高線にほぼ平行に登山道が作られているので、傾斜は最後の急登100mだけという予定であった。

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 登り始めて直ぐに、十字路に出るが、どっちへ行けばいいか道が分からなくなる。いわゆる、整備がされてない登山道なので道が見えない。こういう場合に頼りになるのは、雪山用の樹に吊るされたリボンである。

 樹林帯はいつも心を癒される。

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 傾斜はあまりないものの、道が分からない。踏み跡を頼っての歩きになった。

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 こんな道である。おまけに、登山道が狭い。泥の道なのでヘタすると崖側に滑る。これは、なかなか大変だと思いながらである。また、途中に岩場があったが、この岩のホールドが甘く、自分のような巨漢が乗ったらそのままズルズルと滑り落ちる。大きな岩に足を乗せると、震度2ぐらいぐらつく。体幹が出来てない人には厳しい山である。おまけに、登山道が分かりにくいので迷いやすい。リボンだけが頼りで冬山を歩いているような気分であった。

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 私は、途中で嘔吐をし、ほとんどドクターストップ状態であった。

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 最後の急登は、ロープはあったが今までに経験したことのないような急登で正直、参ったね。ロープと樹木を頼りに一歩一歩登る。

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 この道など杉の木の倒木のため、難儀に難儀であった。

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 なんだかんだで登頂である。頂上からの展望は全くなく。一面、チシマザサに覆われていた。

 ここまでの道のりについて、いい歌があった。

 「♪キラズキラズ 歩いてきた 細く長い この道 振り返れば 遥か遠く

  故郷(ふるさと)が見える でこぼこ道や 曲がりくねった道 

  地図さえない それもまた人生 ~

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 結局、1時間の予定であったが、自分がブレーキになり2時間近くかかっている。

 下山は厳しかった。なんと、ひさしく経験してなかったが、坂道で一回転してしまった。ズボンが泥だらけである。

 おまけに、私は道に迷ってしまった。途中からない。そこで、大声で50mほど先に言っているくさのさんを呼ぶと、登山道を過ぎてしまったとのこと。戻って確認するが、これが道なのかという程度、登山道らしい道を歩いて追いつく。この山は、至る所に迷うところがあり、初心者では難しいと感じた。

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 疲労が激しい。下山口である。ここから、林道を1時間以上歩かなければならない。

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 林道を歩くくさのさん。登りの時のウドを確認したが、既に誰かに採られていた。

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 昼を食べることもできなく、帰路ウドンを食べる。足が痛い。水分は1.5L無くなってしまった。汗をたくさんかいたので、帰宅後シャワーを浴びて、炭酸飲料を飲む。

 今回は、くさのさんのガーミンがなければ実現することは難しかったと思う。感謝したい。