新巻

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■新巻
 ああ、今年も忘れてしまった。と、毎年同じことを嘆いているようだ。
 新巻作りである。
 もう何年も前は作っていた。
 まずは、魚祭へ行くことから始まる。ここで、木箱に入っている生の塩シャケを買う。当時は、1500円ほどで買えた。帰宅後、塩出しして干せば出来上がる。干すと近所の野良猫が奇妙な声を出して見上げていたことを思い出した。
 これを、少しづつ切って食べるのであるが、美味しくはない。いっとき2本干したこともあったが、美味しくはないので、自然に作らなくなった。
 今思い返すと、どうも塩出しが不十分だったように思う。また、ネットで探せば作り方はあるだろう。
 東町の鱒の寿し屋さんのが美味しいので、ここのが最後だった。ちゃんと切ってくれ、箱に入れてくれる。親戚へのお歳暮として、何年間か使っていたが、もう店を仕舞われたようだ。
 よく、ニュースなどで魚屋さんの軒先にぶら下がっているのを取り上げるが、鱒の寿し屋の親父は、自然乾燥はムラになるので乾燥器による乾燥を勧めていたが、個人で対応できるレベルではない。
 来年こそは、作ろう。

■「息」(小池水音著、新潮社、2023年)を読む。(その2)

「実際には、夜の眠りが極端に浅くなり、寝不足と、呼吸の苦しさとがないまぜになって、日中の意識をぼんやりとさせていた。」

「ひとりで静かに過ごす時間を求めていた~」

「~この数週間でもっとも激しい発作が、わたしの呼吸をいびつにしていた。」

「けれど、終わるという感覚は、言葉がなくてもわかる。」

「酸素が足りないためか、わたしの意識はまるで幼いころへと戻っているみたいだった。」

「~新たに日々を立て直そうという前向きな意志は感じられなかった。」

「息を吸うのでも、吐くのでもなく、息が止まったその瞬間に感じたのは、経験したことのない安らかさだった。」

「~むしろ経過は緩やかに悪化をたどった。」

「しあわせでした」

「目が覚めたときに深呼吸をして、肺の底まで息が届いた~」

「深い眠りにつける日は、一年のうちでも数えるほどだった。」

「~日中のほとんどの時間を、近所を散歩して過ごしていた。」

「忘れたくない大切な景色を、すっかり思い出せなくなってしまうこと。」

「菌によって肺が炎症を起こし、組織が硬くなって、酸素を取り込みづらくなっているのだろう。」

「~手足は、はちきれそうなほどむくんでいた。」